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vol.1:気弱SEがアパレルを始めたイキサツ

オシャレに疎く知識も興味も全然なかったガリガリメガネのゴチゴチ天パという陰キャ要素の集合体である私が、一体なぜアパレル事業を始めるなどという陽キャの凝縮みたいなことをしだしたのか。

その始まりまでの物語です。

オシャレの原点、あるいは…

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西暦2007年。埼玉県は川越市。アトレに入っているNICOLE CLUB FOR MENで細身の男性店員が暇そうにフロアを見渡している。

平日は人がこないんだよな。

そこへ母親に付き添ってもらいながら男子高校生がやってきた。

こういうコドモは本人ではなく、親を攻めるものだ。

この高校生はこれまで何度か1人で見にきていたコで、その度にこちらから声をかけて色々説明をしてきた。今日は買っていきそうだ。

この日はこんな会話があった。

「ブーツカットってカッコいいじゃない?ねぇ?」

「…」

「そうスね!ブーツ履くときにはインしてもカッコいいですし、脚を長くカッコよくみせますね」

「(フンフン…フムフム)」

その親子は最終的に後ろポケットが皮になってるダメージ系のジーパンと、タイト目の黒いズボン、淡いピンクのジーパンをお買い上げ。

「ありがとうございました〜!また冬服も入るんでぜひ(シナリオ通りに売れたな)」

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ここまで一言も発していない男子高校生、何を考えているのかわからない。何も考えていないのだろう。そう、この高校生こそが私(17)である

なんとなくオシャレを目指してアトレをウロついては店員に呼び止められ、時には応じ、時には会釈して去るなどという典型的買い物下手を存分に披露していた時期だ。

そのフロアにはMICHEL KLEIN HOMMEも入っていた。そこでは薄ピンク色で袖丈の短いVネックのTシャツが5割引セールで売られていた。1900円で買えたpikoと比べると3000円は高いのではないかと思ったが、お母さんがオシャレだというから買ってもらった。

この頃が私のオシャレの原点であり、どう考えてもオシャレスキルなんて伸びるわけがない。もはや原点というよりも虚数空間である。何を掛けても正の整数にならない。

それなりのオシャレをする学生時代、あるいは…

大学生になる頃、問題が表面化する。何を着ていったらいいのか分からない。

高校時代は制服を着ていればよかった。稀に私服で出かける時は胸元を紐で縛れる半袖とか着ればよかった。(よくない)

MICHEL KLEIN HOMMEで買ったカーキのブルゾンを一張羅としてオリエンテーションに着ていった18才の春の思い出は嫌いではない。

涼しくなったらユニクロのネルシャツを着るなど理系学生の王道ファッションを嗜みつつ、多少時間はかかったが、オシャレの対処法がわかってきた。

店員に聞くのだ。

ベージュのチノパンと白い靴を履いて、白Tシャツの上に麻のピンクのシャツを羽織ることを学んだりした。新たな一張羅の獲得である。たまにデニム感ある青シャツでバリエーションを出したりした。

理系にだってオシャレな人はいる。なんなら私の学科にはイケメンもいたしギャル男もいた。シュレックに似てはいるがオシャレでファッションに詳しい友達もいた。ある日、新たな一張羅で授業を受けていたら友達から言われた。

長谷川「つちや、ベジータの私服じゃね?(笑)」

ググったら本当にその通りで大笑いしたが、それでも尚オシャレはできてると思っていたので引き続き長期的に着ていた。

他にもDIESELのジーパンを履いたりして、それなりにオシャレができていたと自覚があった。

が、しかしその実、いわゆる学生っぽい無難な服をまとい、目立つことを避けていただけであった。そこに個性や自分らしさなんて概念は全くない。オシャレを楽しんでいる人からすれば制服の延長でしかなかっただろう。

変わらぬ虚数的オシャレスキル、あるいは…

冒頭の通り、ギャル男系ショップ店員と母親(?!)にノせられて3万円するファー付きのダウンを買ってもらってたような高校生だった私は、やっぱりオシャレスキルを異次元に託したまま28才になりました。

そして、2018年7月のことです。お仕事の都合でタイに行くことになりました。

自由行動の日、チャトゥチャックウィークエンドマーケットという市場に行きました。そこにはたくさんのお店が出店していて、お菓子、仏像、服、植物、芸術品などなどあらゆるものがギュウギュウに陳列されて売られています。

けっこう色々買ってカバンも重くてそろそろ帰るかと思っていた頃、Tシャツ専門店を見つけて覗いてみたところ、私の運命を変えるTシャツに出会いました。こちらです。

印字されている 「Sorry, I'm different」。日本語訳で「ごめんなさい、私、変わってるの」とか「すみません、私は別です」などに訳せると思うのですが、diferentの正しいスペルは different であり、fが1つ足りていないのです。

つまり、diferent 自体が different なのです。

Sorry, I'm different のアピールそのものが可愛らしいのですが、そのアピールすらも diferent になってしまっている表現に、服をみる感覚と違って戸惑いながらも、たしかに魅力を感じていました。ユーモラスで面白いのですが、落ち着きもあってこれまでに見たことのないタイプのTシャツでした。

どうやらそのお店はオリジナルデザインのTシャツ専門店で、商標大丈夫か?と思えるデザインを含めてたくさん種類がありました。その中から私が気に入ったTシャツを4枚ほど買いました。

帰国後、買ったTシャツを着てみたところ、意外に柔らかくて肌触りが良いことに驚きました。これまで、PIKOやTown & Country、旅行先で買ってしまう割高なTシャツ、袖丈が妙に短いVネックTシャツくらいしか着たことはないのですが、肌触りが良い体験は初めてでした。

最初は、タイ製だから薄手・低品質で洗えば縮んだりほつれたりするんだろうと侮っていました。しかし、気に入って何度も着て何度も洗っても縮むようなことはありませんでした。(3年目ともなると流石に毛玉になっていますが)

その夏は気に入ってよく着ていました。脱出ゲームに行くときに着てたらお洒落がわかるシュレックが「おもしろいね」と言ってくれました。

Burberry Black Labelが実は日本で生まれたという知識をもって着るカットソーは、体に合ってなくてもお洒落で、1万8000円の価値はあると思っていた私が、ファッションで一声お褒めいただいたのです。

このとき、自分だけの趣味だと思っていた「面白いTシャツ」が、他の人に共感してもらえる可能性に気付きました。この時からこのようなユーモアのあるTシャツを輸入販売することを考え始めます。

気になったので、ユーモア系のTシャツについて調べてみました。どうやら、おもしろいTシャツやユーモアTシャツというと、インパクトのあるデザインが主流のようです。新しいタイプのユーモア系のTシャツとして販売するイメージが現実味を帯びてきました。

今思えば、ずっとオシャレスキルが虚数空間に置き去りだったからこそ目についたのかもしれません。ニッカポッカのようなアジアっぽいズボンを旅先で身に着けてエンジョイするタイプの陽キャ日本人だったらきっとアジアっぽい服装にしか目がいかなかったはず。

それから約1年…2019年3月。そろそろ暖かくなります。本当に輸入販売をするなら仕入れ先を確保して、いろいろ勉強しなきゃいけないし、お金も時間もかかるし…と少々迷いはありました。

けっきょく、「興味がわいたから仕方ない!金銭的リスクは高くても10万円程度だ!」と腹を決めてやってみることにしました。(とんでもない金銭事情は見ないフリ)

つちや(Tsuchiya)がタイ(Thailand)から持ち込んで売るTシャツ(Tshirts)ということで、「TsTshirts」にしようという安直な命名には3秒もかかりませんでした。

航空券と宿の予約をして、2019年5月、再び渡泰。2泊3日の弾丸仕入旅に出かけました。

さりげなく妻もついてきました。このとき、旅費のみで10万円を超えていました。

つづく

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